心身の不調は鉄分不足が原因かも? 心穏やかを支えるセロトニン食事術
心身の不調を感じることはありませんか。特に、日々の仕事に追われ、食事が不規則になりがちな30代後半から40代のビジネスパーソンにとって、慢性的な疲れや気分の落ち込みは、決して珍しいことではないかもしれません。こうした不調の背景には、様々な要因が考えられますが、実は「栄養不足」、中でも「鉄分不足」が関わっているケースがあります。
今回は、鉄分が心身にどのように影響するのか、そして心の安定に関わるセロトニン生成に必要な栄養素と鉄分を、どのように食事で手軽に補えるのかをご紹介します。
なぜ鉄分不足が心身の不調につながるのか
鉄分は、体内で非常に重要な役割を担うミネラルです。最もよく知られているのは、血液中のヘモグロビンの構成成分として、全身に酸素を運ぶ働きです。細胞が活動するためのエネルギーを作り出す際にも鉄分は不可欠です。
このため、鉄分が不足すると、全身への酸素供給が滞りやすくなり、エネルギー生成も効率的に行われなくなります。これが、疲労感、だるさ、息切れ、めまいといった身体的な症状として現れます。
さらに、脳を含む神経系の機能にも鉄分は関与しています。脳への酸素供給が不足したり、神経伝達物質の合成に必要な酵素の働きが弱まったりすることで、集中力の低下、イライラ、気分の落ち込みといった精神的な症状につながる可能性が指摘されています。特に女性は月経による出血があるため、鉄分が不足しやすい傾向にありますが、偏った食事やストレスが多い現代人全般にとって、注意が必要な栄養素と言えるでしょう。
鉄分とセロトニンの関係性
セロトニンは、「幸せホルモン」とも呼ばれる神経伝達物質で、精神の安定や幸福感、気分の調整に深く関わっています。セロトニンは脳内で作られますが、その材料となるのは必須アミノ酸の一種である「トリプトファン」です。トリプトファンからセロトニンが合成される過程には、様々な酵素が関わっており、これらの酵素の働きを助ける「補酵素」として、ビタミンB6やマグネシウム、そして鉄分が必要であると考えられています。
つまり、鉄分そのものがセロトニンになるわけではありませんが、鉄分が不足すると、セロトニンを合成する過程がスムーズに行われなくなる可能性があるのです。心身の不調を感じている場合、鉄分不足だけでなく、セロトニンの合成に必要な他の栄養素(トリプトファン、ビタミンB6など)も同時に不足しているケースが考えられます。
鉄分とセロトニンUPに必要な栄養素をまとめて摂る食事のポイント
鉄分には、肉や魚に含まれる「ヘム鉄」と、野菜や穀類、豆類などに含まれる「非ヘム鉄」があります。ヘム鉄は吸収率が高いのに対し、非ヘム鉄は吸収率が低いという特徴があります。非ヘム鉄の吸収率を高めるためには、ビタミンCや動物性タンパク質を一緒に摂ることが効果的です。
セロトニン合成の材料となるトリプトファンは、肉、魚、大豆製品、乳製品などに多く含まれています。トリプトファンからセロトニンへの変換を助けるビタミンB6は、魚類(カツオ、マグロなど)、肉類(レバーなど)、バナナなどに豊富です。
これらの点を踏まえると、鉄分(特に吸収率の良いヘム鉄を含むもの)、トリプトファン、ビタミンB6、そしてビタミンCや動物性タンパク質をバランス良く組み合わせた食事が、心身の調子を整え、心穏やかな状態をサポートすることにつながると言えます。
手軽にできる!鉄分とセロトニンUP 簡単レシピ
ここでは、忙しい日々でも手軽に実践できるよう、鉄分、トリプトファン、ビタミンB6などを効率よく摂れる簡単なレシピをご紹介します。
レシピ1:ツナとブロッコリーの簡単和え物
火を使わず、切って和えるだけの簡単レシピです。ツナ缶(カツオ)からヘム鉄、トリプトファン、ビタミンB6、タンパク質を、ブロッコリーからビタミンCと非ヘム鉄を摂ることができます。
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材料(1〜2人分)
- ツナ缶(水煮またはノンオイル): 1缶
- 冷凍ブロッコリー: 50g程度
- マヨネーズ: 大さじ1〜2
- 醤油またはめんつゆ: 少々(お好みで)
- 黒こしょう: 少々
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作り方
- 冷凍ブロッコリーは表示通りに電子レンジで加熱し、粗熱をとるか流水で冷やして水気をしっかり絞る。食べやすい大きさに切る。
- ボウルに油を切ったツナ缶、ブロッコリー、マヨネーズ、醤油(またはめんつゆ)を入れて混ぜ合わせる。
- 器に盛り付け、お好みで黒こしょうを振る。
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調理時間:約5分
レシピ2:レバー缶とほうれん草のチーズ炒め
レバーは鉄分の宝庫。特に吸収率の高いヘム鉄が豊富です。ほうれん草の非ヘム鉄は、レバーの動物性タンパク質や、一緒に摂ることで非ヘム鉄の吸収を助ける可能性のあるチーズ、そしてビタミンCを含む食材(今回は使用していませんが、レモン汁などを少し加えても良い)と組み合わせるのがおすすめです。レバー缶を使えば下処理の手間が省けます。
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材料(1〜2人分)
- 鶏レバー味付け缶: 1缶
- 冷凍ほうれん草: 50g程度
- ピザ用チーズ: 大さじ2〜3
- オリーブオイルまたはサラダ油: 小さじ1
- (お好みで)醤油: 少々
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作り方
- 冷凍ほうれん草は表示通りに電子レンジで加熱し、水気をしっかり絞る。
- フライパンに油を熱し、ほうれん草をさっと炒める。
- レバー缶を汁ごと加え、軽く炒め合わせる。
- ピザ用チーズを全体に散らし、蓋をしてチーズが溶けるまで弱火で加熱する。
- (お好みで)風味付けに醤油を数滴垂らす。
- 器に盛り付ける。
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調理時間:約10分
レシピ3:ひじきと大豆の炊き込みご飯(市販品アレンジ)
市販のひじき煮(大豆入り)を活用する超簡単アレンジです。ひじきと大豆から非ヘム鉄、食物繊維、タンパク質、ビタミンB群などをまとめて摂れます。ご飯と一緒に炊くことで、手軽に主食から栄養を補給できます。
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材料(米2合分)
- 米: 2合
- 市販のひじき煮(大豆入り): 1パック(100g〜150g程度)
- (お好みで)醤油、みりん: 各小さじ1〜2
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作り方
- 米を研ぎ、通常の水加減で炊飯器の釜に入れる。
- 市販のひじき煮を汁ごと加え、軽く混ぜ合わせる。(お好みで醤油やみりんを加えても良い)
- 炊飯器のスイッチを入れて炊飯する。
- 炊きあがったら全体を混ぜ合わせる。
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調理時間:炊飯時間に準ずる(準備は約3分)
これらのレシピはあくまで一例です。ご自身の食生活や好みに合わせて、鉄分、トリプトファン、ビタミンB6を含む食材を意識的に取り入れてみてください。
まとめ
慢性的な疲れや気分の落ち込みは、見過ごせない心身からのサインかもしれません。その原因の一つとして、鉄分不足が関わっている可能性があります。鉄分は体の機能維持に不可欠であり、セロトニン生成にも間接的に関わると考えられています。
日々の食事に、ヘム鉄や非ヘム鉄、トリプトファン、ビタミンB6などをバランス良く取り入れることで、心身の調子を整え、心穏やかな毎日をサポートすることが期待できます。今回ご紹介したレシピのように、手軽にできることから少しずつ試してみてはいかがでしょうか。食事を通じて、ご自身の心と体を大切に労わっていただければ幸いです。