疲れやすいあなたへ ビタミンB群で叶える穏やかな心と体
疲れやすさや気分の波、それは食事で変わるかもしれません
日々の仕事や生活のプレッシャーの中で、ついつい無理をしてしまい、疲れやすさを感じたり、なんとなく気分がすぐれない日が多くなったりしていませんか。忙しい毎日では、食事も簡単に済ませてしまうことが多く、栄養バランスが偏りがちになることもあるかもしれません。
しかし、私たちの心の状態や体の調子は、日々の食事が大きく影響していることをご存知でしょうか。特に、「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンは、心の安定や幸福感、リラックスに関わる重要な脳内物質ですが、そのセロトニンを体内で作り出すためには、特定の栄養素が必要不可欠です。
今回は、セロトニンの生成を助け、疲れやすい心と体をサポートしてくれる「ビタミンB群」に焦点を当てて、その役割と、忙しい毎日でも手軽に食卓に取り入れられる食材や簡単レシピをご紹介します。
心の安定に欠かせないセロトニンと、ビタミンB群のつながり
セロトニンは、脳内で情報を伝達する神経伝達物質の一つです。気分を落ち着かせたり、充足感をもたらしたりする働きがあり、不足すると気分の落ち込みや不安感、イライラなどにつながることが知られています。
このセロトニンは、私たちが食事から摂取する必須アミノ酸の一つである「トリプトファン」を材料にして体内で合成されます。そして、このトリプトファンからセロトニンが作られる過程で、重要な「補酵素(※1)」として働くのが、他ならぬビタミンB群、特にビタミンB6です。
ビタミンB6が十分に存在しないと、トリプトファンがあっても効率よくセロトニンに変換されません。さらに、ビタミンB群はエネルギーを作り出す代謝にも深く関わっており、不足すると疲労感を感じやすくなります。つまり、ビタミンB群をしっかり摂ることは、セロトニン生成を助けて心の安定を促すだけでなく、体の疲れやすさを和らげるためにも大切なのです。
※1 補酵素: 酵素の働きを助ける物質のこと。酵素は体内の様々な化学反応を進める役割を担っています。
ビタミンB群を効果的に摂るには
ビタミンB群は、ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンなど、複数の種類の栄養素の総称です。それぞれが協力して体内で働いており、どれか一つだけを大量に摂るのではなく、バランスよく摂取することが理想的です。
ビタミンB群は水溶性のため、一度にたくさん摂っても余分な分は体の外に排出されてしまいます。そのため、一度にまとめて摂るよりも、毎日の食事でこまめに摂取することを心がけることが大切です。
また、ビタミンB群は様々な食品に含まれていますが、加工や調理の過程で失われやすい性質もあります。できるだけ新鮮な食材を選び、必要以上に加熱しすぎない工夫も有効です。
セロトニンUPと疲労軽減をサポートするビタミンB群を含む食材
ビタミンB群を豊富に含む食材は数多く存在します。忙しい中でも手軽に食卓に取り入れやすいものをいくつかご紹介します。
- 豚肉: 特にビタミンB1が豊富で、疲労回復をサポートします。
- 魚類: 特にカツオ、マグロ、サンマなどの赤身魚や青魚にビタミンB6やB12が豊富です。セロトニンの材料となるトリプトファンも多く含んでいます。
- 大豆製品: 豆腐、納豆、枝豆など。植物性のタンパク質と共に、ビタミンB群も摂取できます。
- 卵: 多くのビタミンB群を含んでおり、完全栄養食品とも呼ばれます。
- 乳製品: 牛乳やヨーグルトなどにビタミンB2やB12が含まれます。
- ナッツ類: アーモンドやくるみなどにビタミンB群やマグネシウム(セロトニン生成を助けるミネラル)が含まれます。
- 玄米・全粒穀物: 白米よりも多くのビタミンB群や食物繊維を含んでいます。
- 緑黄色野菜: ほうれん草やブロッコリーなどに葉酸が含まれます。
これらの食材を日々の食事にバランス良く取り入れることが、効率的なビタミンB群摂取につながります。
忙しい日でも簡単 ビタミンB群を取り入れやすいレシピ
ここでは、上記の食材を使った、手軽に作れる簡単レシピを2つご紹介します。複雑な工程はなく、短時間で完成するので、疲れて帰った日でも試しやすいはずです。
レシピ1:豚肉と玉ねぎの生姜焼き丼(調理時間:約10分)
ビタミンB1が豊富な豚肉を手軽に丼に。玉ねぎに含まれる成分がビタミンB1の吸収を助けるとも言われます。
材料(1人分):
- 豚薄切り肉: 100g程度
- 玉ねぎ: 1/4個
- おろし生姜: 小さじ1/2
- 醤油: 大さじ1と1/2
- みりん: 大さじ1
- 料理酒: 大さじ1
- 砂糖: 小さじ1/2 (お好みで)
- ごはん: 適量
- 千切りキャベツやレタス (お好みで): 適量
作り方:
- 玉ねぎは薄切りにする。豚肉は食べやすい大きさに切る。
- フライパンに油を少量熱し、豚肉を入れて炒める。色が変わったら玉ねぎを加え、しんなりするまで炒める。
- 醤油、みりん、料理酒、おろし生姜、砂糖を加えて混ぜ合わせる。全体に味がなじむまで炒め合わせる。
- 器にごはんを盛り、3を乗せる。お好みで千切りキャベツなどを添える。
レシピ2:サバ缶と豆腐の簡単和え(調理時間:約5分)
ビタミンB6、B12、トリプトファンが豊富なサバ缶と、ビタミンB群を含む豆腐を組み合わせたヘルシーな一品。火を使わずに作れます。
材料(1人分):
- サバ水煮缶 (または味噌煮缶): 1/2缶 (固形量50g程度)
- 絹ごし豆腐: 1/4丁 (100g程度)
- 醤油: 小さじ1
- ごま油: 小さじ1/2
- いりごま: 少々
- ねぎの小口切り (お好みで): 少々
作り方:
- 豆腐はキッチンペーパーで軽く水気を拭き取る。
- ボウルにサバ缶を汁ごと入れ、フォークなどで粗くほぐす。
- 豆腐を手で崩しながら加え、醤油、ごま油、いりごまを加えて混ぜ合わせる。
- 器に盛り、お好みでねぎを散らす。
どちらのレシピも、特別に難しい技術は必要なく、手軽にビタミンB群を摂ることができます。普段の献立にぜひ加えてみてください。
食事と共に、心穏やかに過ごすための小さな習慣
食事からの栄養摂取に加え、心身の健康をサポートする他の習慣も意識してみましょう。
- 日光浴: 日光を浴びることで、セロトニンの合成が促されると言われています。短い時間でも外に出て、光を浴びてみましょう。
- 軽い運動: ウォーキングなどの軽い運動も、セロトニン分泌を促し、気分転換にも役立ちます。
- 質の良い睡眠: 睡眠中にセロトニンからメラトニン(睡眠に関わるホルモン)が作られます。十分な睡眠を確保することも大切です。
これらの習慣とバランスの取れた食事を組み合わせることで、心と体の両面からのアプローチが可能になります。
まとめ:手軽な食事改善から始める心身の変化
日々の疲れや気分の波は、忙しさの中でどうしても避けられないと感じるかもしれません。しかし、セロトニン生成に重要な役割を果たすビタミンB群などの栄養素を意識した食事は、心身の状態を改善する手軽で効果的な一歩となり得ます。
今回ご紹介した食材や簡単レシピを参考に、まずはできることから少しずつ毎日の食卓に取り入れてみてください。小さな食事の工夫が、あなたの心と体に穏やかな変化をもたらし、日々の幸福感を高めることにつながるはずです。無理なく、ご自身のペースで、食事を通じて心と体を大切にする習慣を始めてみましょう。